妊娠するとお腹の赤ちゃんへの影響を考えて、妊婦さんは摂取するものにも大変気を遣います。
アルコールやたばこはもちろんのこと、生卵やお刺身、ジャンクフードなどは避けて、できるだけ健康的で栄養のある食事を摂ろうとしますよね。
そして、コーヒーや紅茶もカフェインが入っているからダメ!という声もよく耳にします。
ですが、妊娠前はコーヒーや紅茶をよく飲んでいたという人は少なくないはず。
そんな人にオススメなのが、カフェインを含まないタイプのコーヒーや紅茶。いわゆるデカフェやカフェインレスの飲み物です。
では、デカフェとカフェインレスは何が違うのでしょうか。これらの飲み物は、本当に妊娠中に飲んでも大丈夫なのでしょうか。
今回はデカフェとカフェインレスの違いや、何杯飲んでもいいのかなどを説明します。
もくじ
デカフェとカフェインレスの違いとは
デカフェとカフェインレスは、似ているようで異なります。
・デカフェ
もともとカフェインが入っていたものからカフェインを取り除き、その結果カフェインを含まなくなったもの。カフェイン含有量は0ではない。
・カフェインレス
カフェイン含有量は0ではないものの、ゼロに近いくらいカフェインの含有量が少ないものを指す。(欧州基準0.1%以下)
・ノンカフェイン
カフェイン含有量は0
デカフェとカフェインレスはどちらもカフェインがかなり少ないものという意味では同じですが、含有量でいえば僅差ながらもデカフェ>カフェインレス>ノンカフェインとなります。
ノンカフェインはカフェイン含有量が0です。ルイボスティーや麦茶などです。
カフェインはコーヒー、紅茶の他にもウーロン茶や煎茶、ココアやコーラなど色々な飲料に少なからず含まれているものです。
なかでもコーヒーや紅茶は嗜好品なので、妊娠前は一日何杯でも飲んでいたという人も少なからずいることでしょう。
コーヒーや紅茶に含まれているカフェインは眠気覚ましに良いということで、朝起きてコーヒーを飲んだり、仕事中にリラックスするために紅茶やコーヒーを飲んだりと、リフレッシュや精神安定剤的役割として多くの人に好まれています。
カフェインには覚醒作用、血管拡張作用、交感神経の刺激、利尿作用、解熱鎮痛作用などの効能があり、一概に悪いものだとも言い切れないのです。
妊娠中にデカフェにする理由
ではどうして妊娠したらカフェインを摂ってはいけないと言われているのか?
カフェインには、中枢神経を刺激して緊張させ、心筋や血管の収縮を促す働きがあります。
妊娠中は血圧が上がりやすくなるので、カフェインを摂ることで血管が収縮され、お腹が張ったり最悪早産や流産するリスクがあることは否めません。
もちろんカフェインだけが理由ではありませんが、カフェインの効能として血管を収縮することは事実ですので、心配ならカフェインは摂らないに越したことはないということです。
また、カフェインにはポリフェノールの一種の「タンニン」という成分が含まれているのですが、これがお母さんの体内のカルシウムや鉄分と結合して、尿となって体外へ排出する働きを持っています。(カフェインによる利尿作用)
妊娠中は、お腹の赤ちゃんのためにお母さんはカルシウムや鉄分はたくさん摂取する必要があるのですが、これが赤ちゃんに行きわたらず尿として排出されてしまっては、赤ちゃんに十分な栄養がいきません。
カフェインを摂りすぎると、母体が慢性的なカルシウム不足になったり、貧血気味になったりするのです。
また、妊娠後期になると母体の肝機能が低下するため、カフェインの摂りすぎによって高血圧を誘発する可能性があります。
妊娠高血圧症候群になるとハイリスク妊娠になってしまうため、高血圧にならないようカフェインを控えるべきなのです。
そして、お腹の赤ちゃんにとってもカフェインは好ましいとは言えません。
胎児は肝臓や代謝機能が未発達のため、カフェインを体外に排出することができず、胎児の身体や脳に蓄積されていきます。
また、カフェインの血管収縮作用により母体から胎盤へ送られる血液の量が減少する可能性があります。
カフェインの過剰摂取は、低酸素状態や発育障害、低体重児、早産、流産、死産などのリスクがあると報告されています。(海外の研究機関)
これらのリスクを考え、妊娠中にカフェインを過剰に摂取することは赤ちゃんに良くないと言われており、デカフェやカフェインレスの飲料が推奨されているのです。
デカフェの安全性と危険性
ではデカフェなら100%安全なのか?と気になるところです。そもそもデカフェとは、元々カフェインを含んでいたものからカフェインを取り除いたものですので、どうやってカフェインだけを取り除いたのか、その方法が気になります。
デカフェに使用される脱カフェイン法としては以下の三つがあります。
1. 有機溶媒抽出(ケミカル・メソッド)
2. 水抽出(スイス式水抽出法)
3. 二酸化炭素を使う超臨界二酸化炭素抽出法
1. は、有機溶媒を通してカフェイン抽出を行います。
メリット…比較的安価
デメリット…カフェイン以外の成分も多く損なわれ、風味が落ちる。また化学物質が残留するなどの安全面での心配がある
2. は、水でカフェイン抽出を行います。
メリット…2段階に分けてカフェインを抽出するので、カフェイン以外の成分を大きく損なうことがない。有機溶媒抽出に比べると味や風味もしっかりしている。
3. は、超臨界流体(一定以上の圧力と温度を加えることで、気体と液体両方の性質を兼ね備えた状態)にした二酸化炭素でカフェインだけを抽出します。
メリット…味や風味がほとんど損なわれない。薬剤を使用しないので安全性が高い。様々な点において有機溶媒抽出法のデメリットを補った脱カフェイン法として主流となっている。
以上のことから、デカフェ製品はカフェインの抽出法によって危険性も左右されます。
現在では超臨界二酸化炭素抽出法が最もポピュラーとなっているため、デカフェ製品は極めて安全だと言えそうです。
デカフェは何杯飲んでもいいのか?
最近ではカフェなどでもデカフェの商品が出ていたりして、外でお茶をする時でもコーヒーや紅茶が飲めたりします。ベビー・マタニティ専門店などでも、デカフェ製品が販売されています。
では、デカフェなら何杯飲んでも良いのかと気になるところですが、結論から申しますと常識の範囲内であれば好きなだけ飲んでも良いでしょう。
例えば、一日に10杯も飲むのは、たとえ妊娠していなかったとしても飲み過ぎです。大体は起床時、昼食後や午後の休憩時間、多い人でも夜に一杯程度ではないでしょうか。
WHO(世界保健機構)では、一日あたりコーヒー3~4杯までなら大丈夫とされています。
普通のコーヒーで3~4杯OKなら、デカフェ製品なら同じだけ飲んでもカフェインの量は相当少ないと言えます。
元々コーヒーや紅茶が好きな人は、デカフェというだけで物足りなく感じる人もいると思います。また、どんなにデカフェ製品が優秀でも、やはり香りが違う、風味が足りないといって普通のコーヒーが欲しくなることもあるでしょう。
妊娠中だからといってデカフェばかり飲んで物足りないとストレスを感じるくらいなら、3杯のうち1杯は普通のコーヒーを飲んでも良いのではないかと個人的には思います。
確かにデカフェならカフェインの量については心配ありませんが、好きな物を我慢していやいや違うものを飲むというストレスは、カフェイン以上に胎児に悪影響を及ぼす可能性もなきにしもあらずです。
母体がコーヒーを1杯飲むことでリラックスし、美味しいと素直に感じることができれば、赤ちゃんにも良い作用になるでしょう。
妊娠中におススメの飲み物
では、妊娠中にオススメのデカフェ、ノンカフェインの飲み物をご紹介します。
・たんぽぽコーヒー
焙煎したタンポポの根から作られるコーヒーです。コーヒー豆は使用していないので、カフェインが含まれていません。
風味はコーヒーに近いため、カフェインを摂りたくない人用の代用コーヒーとして人気です。
・黒豆茶
大豆イソフラボンや、黒い皮部分のアントシアニンなどの栄養素も豊富で風味が香ばしいお茶です。もちろんノンカフェインです。
・ルイボスティー
ノンカフェインかつ低タンニンで、ポリフェノールがたくさん含まれています。
ルイボスティーには抗酸化作用があり、体内の活性酸素(身体を錆びつかせる物質)を除去し、身体の免疫力を高める作用があります。
また、マグネシウムやカリウム、ビタミンCやカルシウムなどの栄養素がたっぷり含まれているので、美肌や体温上昇にも大変効果があります。
・カフェインレス、デカフェ紅茶
コーヒーは身体を冷やす飲み物とされている一方、紅茶には身体を温める作用があります。
さらに生姜を入れると効果倍増です。
まとめ
妊娠中はできるだけカフェイン摂取は避けた方が好ましいですが、ストレスが溜まるほど大好きな紅茶やコーヒーを我慢するのは、お母さんにもお腹の赤ちゃんにも良いとは言えません。
デカフェ製品で代用できるものは切り替えて、ストレスなく好きなものを飲みましょう。
カフェインに限らず、健康に良いとされるものでも偏った過剰摂取はよくありません。
適度な量で、摂りすぎないように注意しマタニティライフをエンジョイしましょう。